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【実話】大学時代に経験した三角関係の思い出5

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少年は荒野を目指す

まだ白モヤのかかった夏の早朝。僕は京都駅から電車に乗って長野県を目指した。*当時はスマホもなかったから行き方を家のPCで調べてプリントアウトしてポケットに突っ込んだ

といっても最寄り駅がどこなのかそういえばわからない。とりあえず「飯田」という地名だけは聞いていたので「飯田」を目指した。

僕は松村からもらった青春18切符を使ってのんびりと長野県を目指す。

滋賀を通り抜ける時、電車の窓から見える空がとても青かった。ほぼ寝ていなかった僕は眠気の中で電話の向こうで彼女が言っていたことを思い出て考えていた。

彼女は言った。

「あなたのことは嫌いじゃないし付き合えたら楽しいなとも思えるんだけど、でも付き合えないんです。ごめんなさい」

これの指す意味とは何なのだろう。付き合えたら楽しいと思うけど、何か付き合えない理由があるのだ。一体何故か?彼氏が本当はいるのか?とも思ったが、自慢じゃないが彼女と大学で再開して以来、僕はほぼ毎日彼女と何らか連絡をとっていたし何度も会っていた。だから多分それはない。まあ、付き合っている人が海外にいる、とかなら話は別だがそれならばおそらくそういう話は一度くらいでているんじゃないかと思うのだ。

では何故か?何か大きな避けて通れない理由があるのだ。

ひょっとしたら彼女は何らかの病気にかかっているのかもしれない、と僕は思った。どう客観的に考えても、彼女が僕に嫌悪感の持っているとは考えられなかった。好きかどうかは別にしても、一緒に食事をしたり抱き合ったり軽いキスをするくらいには好意を持っているのだ。気持ちはあるのに、身体的な事情で付き合うことができないー。うん、これはありうるのかもしれない。

でももしそうした病に侵されているとしても、僕が大学を卒業して働いて稼げばいいのだ。そうすれば彼女の生活や今後の人生を支えることはできるかもしれない。僕はそんな事を考えていた。

途中、何度か電車の乗り換えがあった。乗り換えの待ち合わせの時間は30分とかザラだった。そしてある駅でタバコを吸いながら電車を待っていた時、僕は当時受けていた会社の内定連絡の電話をもらった。別に嬉しくもなんともなかったが、僕が抱える問題は一つ片付いた。

僕は吉田くんに電話をすることにした。そろそろ最寄り駅がどこか知っておいたほうがいいと思ったからだ。電話をすると彼はすぐに出たので、僕は事情を説明した。

「は?」と彼は言った。

「だからさ、僕は藤田さんを好きになっちゃったから今から会いに行くんだよ。だからお前らの最寄り駅を教えてくれ。飯田のどこ?」

吉田くんは電話の向こうで乾いた笑いをした。
「わかりました。イイナカミサトって駅です。でも藤田はやめたほうがいいですよ」

「なんで?」

「あいつはモテるんですよ。俺の同級生が何人もあいつに振り回されてふられるの、ずっと見てたので」

「まあ魅力的だからね。わかるよ」

「とりあえず着いたら連絡ください。今どこですか?」

「中津川って駅。ここ、何県だろう」

「岐阜ですね。そこから高速バス出てますよ」

「え、マジか」

「いいなかみさと着いたら迎えいきますね。辞めたほうがいいとは思いますけど、俺はあなたのそういうところ、尊敬します

彼はそう言って電話を切った。

伊那上郷駅と青い空


中津川駅からバスが出ているならば話は早い。調べてみると確かに飯田駅行きのバスがあった。しかも運良くすぐ発車するところだったので僕は迷わずに飛び乗った。

バスはあっさりと僕を飯田駅まで連れて行った。時間にして90分くらい。なんだか僕は拍子抜けしてしまった。

しかしこれでだいぶショートカットができた。飯田駅に着いたので僕は満を持して藤田さんに電話した。彼女もすぐに電話に出たが、昨夜の話があったばかりなので少しばかり怪訝そうだった。

「もしもし・・・?どうしたの?」

「頼むからキモいとか思わないでほしいんだけど、僕は今、飯田駅にいる。昨日の話をちゃんとしたくて」

「え」

「今から伊那上郷(いなかみさと)駅に行こうと思うんだけど、今日はこの後暇?」

「うん、空いてるけど、本当?」

「うん、本当。着いたら連絡するから会えるかな」

「うん、わかった」

「キモイと思わないでほしい」

「思わないよ。驚いたけど、嬉しいです

こうして思いつきで飛び出した割に順調に僕の度は進んだ。ただ、飯田駅から伊那上郷駅までの電車は一時間に一本しかなく、僕はそこでも40分くらい待つことになった。

2両くらいしかない小さい電車に乗って、僕は伊那上郷を目指した。電車の中では平和そうな光景が広がっていた。誰も僕のことを知らない。僕が昨夜ふられて早朝青春18切符でここまできて、今からふった女の子に会いに行く、ということを知らない。

そして伊那上郷に着いた。僕は藤田さんに電話すると「わかった、ちょっとまってて」と言われた。

彼女のいう「ちょっと」がどれくらいの感覚なのかわかんないけど、そこから1時間くらい待った。

広く青い空と山を眺めながらタバコを何本か吸い終わった頃、山の向こうから二人乗りのバイクが見えた。
藤田さんを乗せた、吉田のバイクだった。

<続く>

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