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【実話】大学時代に経験した三角関係の思い出4

<前回はこちら>

大学生の夏休みは長い。僕はもう四回目なので特に感慨はなかったが、まだ一回生の藤田さんからすれば初めての大学生の夏休みはビッグイベントだっただろう。

彼女が実家である長野に帰る日がやってきた。約束どおり、僕は彼女を京都駅まで送っていった。京都駅からだとご実家まで3,4時間くらいかかるという。彼女の家に迎えに行き、僕らはバスで京都駅まで向かう。そして京都駅でランチをして僕が大好きなカフェに行ってスムージーを飲んだ。

それから僕らは京都駅の名物、大階段に行って座って新幹線までの時間を潰すことにした。

そこで僕は、彼女に自分の好意を伝えた。「好きだから付き合ってほしい」と。

彼女は一瞬驚いたような顔になったが、すぐにいつもの表情に戻り「実家にいる間に考えるね」と言った。「うん、それでいいよ」と僕は返事をした。

そうして彼女は新幹線に乗って、長野県に帰っていった。長い長い夏休みの始まりだった。

電話の答えは


それから僕の怠惰な日々が始まった。藤田さんのいない京都の日々は本当に退屈だった。就職活動は何の進展もなかったが、正直もうやる気もしなかったので特に動くこともしなかった。

僕は毎日6畳の部屋で寝起きして、パスタを茹で、珈琲を入れ、テレビを見たり本を読んだりした。そして夜になると藤田さんと毎晩電話をした。
そう、僕は毎日彼女と電話をしていたのだ。彼女も実家で退屈しているらしく、「早く京都に帰りたい」と言っていた。

僕らは毎晩他愛もない話をした。それはとても楽しい時間だった。僕は彼女と電話する夜だけを楽しみに日々生きていた。そしてそんな日々が10日くらいたった時、僕は彼女に聞いてみた。

「京都駅で話したこと、どうかな?」
すると彼女は電話の向こうで突然沈黙になった。

「あ、別に急かすつもりはないからまだならそれでもいいんだけど、気にはなるからね」

僕は慌ててフォローを入れたつもりだったが、電話の向こうで彼女は鼻をすすり始めた。どうやら少し泣いているようだった。僕は何が起こっているのかわからず、動揺した。そして彼女は言った。

「あなたのことは嫌いじゃないし付き合えたら楽しいなとも思えるんだけど、でも付き合えないんです。ごめんなさい」

そうして電話は終わった。

劇の最前線

もう何がなんだかさっぱりわからなかった僕は家を出て行きつけの定食屋「デイビット」に向かった。部屋で一人でいると気が狂いそうだった。僕は多分、彼女はOKしてくれると思っていたのだと思う。これから始まる愛の生活に、僕は心が豊かになり、余裕が生まれ、彼女のことを想う時間のために毎日を生きていた。だから僕は数日間も一人で過ごせたしそれでも心は満ち満ちていたのだ。

ところが、それが一瞬にして崩れた。「付き合えない」とはっきり言われたのだ。ここ最近の僕の心の拠り所が一瞬にして崩壊し、僕は奈落の底に突き落とされた。絶望的だった。就職も決まってないし、一体どうすればいいのか全くわからなくなったのだ。

デイビットで僕はカウンターに座り、大好物のチキンチーズ定食を食べた。そしてサービスのアイスコーヒーを飲み、タバコを吸いながら、忙しそうに働いている松村とマスターの様子を眺めていた。デイビットは今日はとても繁盛しているようで、二人は本当に忙しそうだった。

そしてようやく営業時間が終了した。マスターは「出前のラーメンでもとるか」と言った。「お前もなんか食べるけ」と聞かれたので、僕は「じゃあネギラーメンお願いします」と頼んだ。チキンチーズ定食を食べた後だったけど、別にもう関係ない。なにせ僕は振られたのだから。

そうして僕らはラーメンを食べながら、僕のこの一連の話をポツリポツリと話し始めた。松村とマスターは最初はニヤニヤしながら聞いていたが、途中から雰囲気を察したのか真顔でラーメンを食べながら黙々と話を聞いていた。

そして全て話し終えた時にマスターは言った。

「付き合えない理由はわかんないのけ」

「わかんないっすね」

「じゃあお前、会いに行け」

「は?」

「会いに行って聞かにゃわからんやろ」

松村は鞄の中をゴソゴソと漁りだし、僕に一枚に封筒を手渡した。

「この中に青春18切符が入っているから使っていいよ。夏休みに一人旅で使う予定だったけど一枚余ってるから」

「え?」

「まあこれは観戦チケットみたいなもんさ。この茶番劇を、俺は最善席で見させてもらうよ」

こうして僕はそのまま長野に旅立つことになった。帰宅して荷造りをして、始発とともに家を出た。

<続く>

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