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イギリス、バックパッカーの思い出(前編)

僕がイギリスに旅立つまで

昨今の大学生と話していると様々なジェネレーションギャップがあるが、その一つに海外との近さがある。今の学生は、平気で海外に行く。留学に行く。これは僕の時代は考えられなかった。まあ、僕が在籍していたのが心理学専攻という非常に内向きな学科だったせいもあるけど、兎にも角にも、僕の周囲には留学に行く奴はゼロ、海外旅行も卒業旅行で行くか行かないか、というレベルだった(僕の卒業旅行は男子五人で京都ー中国ー四国をドライブで回るというものだった。今考えると地味だ)。

そんな中、僕は大学三年生の時にイギリスにバックバッカーで旅に出た。理由は、当時片思いしていた先輩に対して、何かカッコつけたかったという非常にどうでもいい理由だ。先輩には大手企業に内定をもらっている彼氏がいて、自分の非力さを何とかしたいと思ったのだった。厨二病をこじらせていた文系大学生にあるあるな話だろう。
ただ、海外にバックバッカーに行くというのは、それくらい珍しいことだった。
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片思い中の文系大学生は、大抵こじらせる。先輩とメールしたいと思ってもそうもいかない。LINEと違い、メールを相手に送るというのは結構心理的ハードルが高かったのだ。そうなると、片思い中かつ一人暮らしの大学生は辛い。
大学三年生の試験が終わり、8月に突入した頃、僕はいつにもましてこじらせていた。今と違ってインターネットで時間を潰す文化がなかったので、僕は本屋に行き、oasisのノエルギャラガーのインタビュー記事を読んだ。今でも覚えているが、こんな一言があった。

「世の中の価値観がこの先どれだけ変わっても、今の自分がクソだと思って、いつか世界中を旅して回りたいと思っているキッズは、これからもいなくならないぜ」

僕はこの一言にビビビッときた。そうだ、旅に出よう。その足で自転車を飛ばし、旅行代理店に転がり込んだのを覚えている。可能な限り、早く行きたい。代理店のカウンターの人にそう告げた。行き先は、イギリスだ。

なぜイギリスだったかといえば、理由は一つで、僕はイギリスのロックミュージックが大好きだったからだ。上述のoasisを生んだ国、イギリス。海外に行くなら、イギリスだろうー。もう、それくらい単純な理由で僕はイギリス一人旅を決めた。

代理店の人はすぐにイギリス行きのチケットを手配してくれた。バックパッカー初体験なら、一泊目のホテルくらいは押さえておいたほうがいい、とアドバイスを受け、それもそうだなと思い、ロンドンのホテルも手配してくれた。

全ての手配が済み、彼は言った。

代理店「では、パスポートをお預かりします」

僕「あっ」

代理店「えっ」

僕は、パスポートを持っていなかった。勢いできたから家に忘れてきた、とかじゃなく、ただ単純に持っていなかった。

代理店の人は呆れながら、最短でパスポートを取得できる期間を見越して飛行機とホテルを取り直してくれた。
出発の時期は、一ヶ月後となった。その足で僕は、京都駅までパスポートを申請しに行き、残りの日数は全てバイトに当てた。

ロンドンに着いた日に起こった同時多発テロ

僕の海外一人旅は、波乱の連続だった。まず、ロンドンに着いた翌日にNYで同時多発テロがあった。僕は安い宿に泊まっていたから部屋にテレビなどなかった。だから、世界で何が起こっているのか知らず、「安い」という理由だけでロンドンはずれにあったイスラム教徒の街に泊まっていた。その街は明らかに不穏な空気が漂い、銃を持った警官がたくさんウロウロしていた。テロの首謀者がムスリムだったため、街中は厳戒態勢だったわけだ。夜中にどこかの窓ガラスが割れる音が聞こえ、叫び声が聞こえた。僕は、「やっぱ海外って怖い」と思ったものだ。

その数日後、僕は知り合った人にテロのことを聞いた。彼は言った。「これから第三次世界大戦が始まるから、お前はもう日本に帰れない」

なんてこった、と思った。好きな女の人にカッコつけるために海外行ったのに、まさか日本に帰れなくなるとは。

さらに彼は、衝撃的な事実を教えてくれた。当時、イギリスの通貨ポンドは1ポンド200円くらいだった。ただ僕は、当時の米ドルレートである「1ドル100円」という感覚があったため、海外のお金はそういうもんだと思っていたのだ。つまり、1ポンド100円だと思っていた。「イギリス、物価安いな!」なんて思いながら大いに食って飲んでいたのだ。

大急ぎで僕は残りのお金を確認した。当初の予定では、イギリス滞在は一ヶ月。その一ヶ月すら、まともに暮らせないお金しか残っていなかった。

僕は、泣いた。ホテルの宿に戻って泣いた。憧れていたイギリスだったが、まさか帰れなくなるとは。定住したいなんてさすがに思ってないぞ、と。
というかそもそも、もし本当に帰れなかったらどうすればいいんだろう。なんのスキルもなく、英語も喋れない日本人を雇ってくれる人なんているのだろうか。

僕は、呆然とした。大学時代に打ち込んでいた空手の演武でもやって、おひねりをもらうようなことをしなくてはならないのだろうかー。

真面目にそんなことを思った。

こうして、僕の大英帝国バックパッカーは幕を開けた。

続く。
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