() (Sigur ros)

2002年発売。シガーロス4枚目のアルバム。グラミー賞ベスト・オルタナティブ・ミュージック、ベスト・アルバム・カバーにノミネートされた。

名前がないアルバム

このアルバムには名前がない。一応便宜上、ファンの間では「untitled」と呼ばれることがある。ちなみに曲にもすべて曲名がない。とはいえデータで音楽を聴くのが当たり前になった昨今、データで管理する便宜上曲名は必要。itunesではこのように表示されている。
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もっと言うと、このアルバム、上の画像の通り8曲収録されているのだが、すべて同じ歌詞と同じメロディーラインである。ヴォーカルであるヨンシーはひたすらアイスランド語とホープランド語(造語)の組み合わせの歌詞を書いており、同じフレーズを延々と呟き続ける。曲もベースは同じメロディーラインなのだが、アレンジが全く違うので、よく聞かないとすべて同じ曲だと気づかないかもしれない。それくらい、同じなのに、違う。

要はつまり、主張がない。個性がない。自己がないのだ。

しかし、素晴らしい。あまりにも素晴らしい。1曲1曲独立してはいるのだが、8曲すべて、アルバム1枚で一つの作品。デジタル配信によってアルバムという概念が形骸化していく中、「アルバム」として表現されたアルバムなのだ。

絶望すらない世界

基本的には静かで朝もやというか夢の中で残響するような音が重ねられていく。オルガンやギターの残響、ピアノとうめき声のようなヴォーカル。
優しいようで残酷。でもそこに悪意はなく、目の前に圧倒的な高さの絶望の壁がどん、と置かれているような世界。

しかしそこに感情はない。ひょっとしたら意識すらない。悲しみも苦しみもない。
そういう意味ではradioheadのkid Aにも通じるものがあるかもしれない。kid Aはそれをエレクトロニカとサンプリングされたヴォーカルとズタズタに切り裂かれたメロディーで表現したけれど、シガーロスは伝統的な”音楽”を昇華してこの世界を創り上げた。
1曲目、ギターをアンプにつなぐジジっという音から始まり、基本的には静かな展開の曲が続き、ラストの曲ではそれが一転、叩きつけるようなドラムと激情したようなヴォーカル、そして最後はアンプを抜く音で終わる。

説明すらいらない

僕にとってものすごく重要なアルバムな事は間違いないんだけど、これまでこのサイトで取り上げなかったのは、どう表現していいか分からなかったからだ。でも、なんとなく、今日の雪の中をとぼとぼ歩いていて、静かな、人も車も周りにいない雪の中を歩いていて、思ったのだ。表現する必要ないんだな、と。だって、当の本人たちが名前をつけなかったのだ。ここには言葉はいらないのだ。ただただ、そこには音があるのだ。

なので、聞いてほしい。とりあえず、PVがある1曲目を貼っておく。

2003年にMTVのヨーロッパ・ミュージック・アワードにて、最優秀ビデオ賞を受賞したこのビデオ、ストーリーがちゃんとあって。
舞台はどこかの世界の小学校。
毒かガスかで汚染され、ガスマスクがないと外に出れない世界。
汚染されていないか一人ひとり大人にチェックされていく無表情な子供達。
しかしチャイムが鳴り、学校が終わる。
子供達は一目散に、嬉々として学校を出る。
そしてPVの最後に子供達は絶望的な世界の中で、それでも元気に、無邪気にはしゃいで遊ぶのだ。

この時の映像が、曲と相まってもう本当に美しく、悲しい。そして最後は、その中の一人の男の子ガスマスクが外れてしまうところで、映像は終わる。

まあ、見なさい。話は、それからだ!

Sigur Rós – Untitled #1 (aka Vaka) from sigur rós on Vimeo.

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